権利金の授受の取引慣行のある地域で借地権の設定があった場合、権利金の授受がなくても、相当の地代を収受していれば権利金の認定課税は発生しません。
法人税法では、借地権の設定時以降の地代の額は、契約当事者の判断で、地代の額を土地の価額の上昇に応じて改定する方法と地代の額を据え置く方法のいずれも認めらます(法基通13-1-8)。
1.借地権価額の発生と課税時期
(1)スライド方式
「相当の地代の改定方法に関する届出書」の提出によりその土地の価額の上昇に応じて順次その地代の額を改定する方法を選択した場合
この地代の改定は、おおむね3年以下の期間ごとに見直しを行い、地代の額が土地の価額の変動に比例したものであれば借地権が発生することはなく、地代の改定が実際に行われていない場合は、改定が行われたものして相当の地代の額と実際の地代との差額について地代の認定課税が行われます。
(2)非スライド方式
(1)以外の方法で、相当の地代を据え置いた場合、土地の価額の上昇に連動せずに地代を改定した場合
これらの場合は、土地の価額の上昇により実際の地代の額が相当の地代の額に満たなくなり、自然発生的に借地権が賃借人に帰属していきますが、その時点では課税関係は発生せず、借地人がその借地権を売却したり、返還する際に借地権の帳簿価額が0のため、売却益として課税関係が発生します。
2.自然発生借地権の譲渡価額
「相当の地代の改定方法に関する届出書」の提出をして、土地の価額の上昇に応じて相当の地代を改定する方法を選択した場合、又は「相当の地代の改定方法に関する届出書」の提出がなくても相当の地代を維持している場合は、借地権の価額は0となります。
しかし、借地権設定後、土地の価額の上昇とともに実際の地代の額が相当の地代の額を下回ることとなったときは、自然発生的に借地権が賃借人に帰属していくことになります。
この場合の借地権の価額は、次の算式で計算します。
<算式>
土地の更地価額×(1―実際に収受している地代の年額/相当の地代の年額*1)
*1:法人税法基本通達13-1-2による相当の地代
計算例
借地権設定時の土地の価額が2,000万円で、相当の地代で賃借しました。その後土地の価額が、5年後に3,000万円に上昇していったときに、その時点での借地権価額は、次のとおりとなります。
実際の地代の額が120万円、相当の地代の額が180万円とした場合、
3,000万円×(1―120万円/180万円)=1,000万円
借地権割合:1,000万円/3,000万円=33%
土地の売買金額が5,000万円とした場合、借地権価額は5,000万円×33%=16,500,000円、
底地価額は50,000,000-16,500,000=33,500,000円となります。 底地と借地を長期譲渡・短期譲渡と区分して譲渡所得を計算する際には、借地権の取得費は0のため、全額が譲渡益となります(自然発生借地権の課税時期の繰延)。
また、法人税通達算式を次のように修正しても算定されます。
土地の譲渡価額総額(A)×(1-実際地代/A×6%)