納付すべき相続税額が10万円を超え,その納期限までに金銭で納付することを困難である場合には,その納付を困難とする金額を限度として,不動産等の割合に応じた延納期間による年賦延納(注1)の許可を申請することができます( 相法38① 、措法70の10① )。
「不動産等の割合」とは,課税相続財産の価額(相続税の計算の基礎となった財産の価額)のうちに占める不動産等の価額の割合ですが、分母である「課税相続財産の価額」に債務控除は含まれないため、遺産分割の協議内容により次のように「不動産等の割合が変わることよって、延納期間や利子税の割合がことなることになります。
(注1)課税相続財産のうち不動産等の占める割合が75%以上の延納期間、利子税の割合(特例割合)は不動産等に係る延納相続税額については、それぞれ20年、0.4%、50%以上75%未満では15年、0.4%、50%未満では5年、0.6%となります。
1 債務控除と代償分割
(1)債務控除
相続税の課税上債務控除の対象となる債務の額は,相続税法13条における「その者の負担に属する部分の金額」である各相続人の法定相続分に応じた債務に限られますが、相続税の申告書作成では第13表(債務及び葬式費用の明細書)において「その者の負担に属する部分の金額」をその者が「実際に負担する金額」として、共同相続人のうち特定の者が被相続人の債務全額を負担する場合、その特定の者の債務控除の対象として課税価格の計算上控除します。このことは次の代償分割として考えた時に相続税の課税計算上問題がないためで、相続税の申告書の記載の簡略化による取扱いと思われます。
(2)代償分割
共同相続人が法定相続分により負担すべき債務を、遺産分割協議において特定の者が負担する旨を定めた場合には、その特定の者が負担する債務は、①特定の者が被相続人から承継した債務(被相続人の債務のうちその特定の者の相続分に相当する部分の債務)と②他の共同相続人が被相続人から承継した債務(被相続人の債務のうち他の共同相続人の相続分に相当する部分の債務)で,他の共同相続人に代わり代償債務として特定の者が負担することとしたものから構成されます(注2)。
(注2)相続税申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)において特定の相続人の「代償債務」と他の共同相続人の「代償債権」として他の共同相続人の法定相続分の債務を記載
2 遺産分割案の修正
延納期間・利子税の割合に影響を与える不動産等の割合(課税相続財産の価額)に債務控除は考慮されません。遺産分割協議において特定の相続人の債務とする場合、不動産等の割合は低くなり、延納期間は短く、利子税の割合は高くなります。一方、特定の相続人が他の相続人に対する代償債務とすることにより課税価格は変わることなく、不動産等の割合は大きくなり、延納期間は長くなり、利子税の割合は低くなります。