民法第899条「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」
最高裁判決・昭和34.6.19「相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきである」
上記の判決のとおり、金銭債務は相続の開始により各相続人に法定相続分に応じて,当然に承継されることになります。したがって,遺産分割の対象にはならずに、それぞれの相続人が債権者へ支払わなければなりません。
つまり、相続人間で、誰が相続債務を負担するのかについて合意をすること(債務引受契約)自体は有効ですが、そのことを債権者に対して対抗することは出来ず、各相続人は相続分に応じて相続債務を承継することになります。
もしも、相続人間の合意だけで相続債務の帰属を自由に決められるとすると、支払能力のない相続人に相続債務が押し付けられてしまい、債権者による債権回収が困難となってしまうためです。
それでは「債務引受契約の意味がないのではないか」という事になりそうですが,「債権者の承諾」があれば,債務を引き受けた相続人以外の相続人は債務を免れることができます。以後は,遺産分割協議等で定めた債務引受相続人のみが支払っていくことになります。
また,債務引受契約があれば,相続人間では有効な契約ですから,債権者の承諾がなくても,債権者へ支払った相続人は,債務を引受けた相続人に対して求償することができます。
相続税の申告においては、夫(被相続人)の銀行借入金6千万円を妻と長女及び次女が相続する場合、妻が債務の全部(6,000万円)を承継するという遺産分割協議は、配偶者が長女及び次女それぞれ承継すべき債務1,500万円(債務総額6,000万円×法定相続分1/4)を配偶者が引き受けることを条件とする代償分割に該当することになります。