相続において相続人以外の者へ財産を相続させる(遺贈する)遺言書を目にすることがあります。
では、その者(受遺者)にかかる相続税を、相続人に負担させる場合の課税関係はどのようになるのでしょうか。
「妹(障害者)へ使用貸借で貸し付けている不動産を遺贈し、かかる相続税を長男に負担させる。」という遺言について考えてみます。
1 長男が負担する妹の相続税
妹が本来負担すべき相続税を長男に負担させることにより妹が受ける利益は、妹が被相続人から遺贈により受けた利益とみなされ、妹の課税価格に算入されます(相法9)。
一方、長男が遺言により相続税を負担することとなった妹の相続税に相当する金額は,長男の相続税の課税価格の計算上,代償分割において負担する代償債務と同様に,長男が相続により取得する財産の価額から減額されるものと考えられます。
2 妹の課税価格に算入される相続税額
妹に課税される相続税額は,次の算式により計算されます。
X=〔C×{(B+X)/A}〕×1.2(注)
※A=相続人及び受遺者(妹)の相続税の課税価格の合計額
B=妹が遺贈により取得した財産(不動産)の価額
C=Aの金額に基づいて計算した「相続税の総額」
上記の算式は次の式に展開できます。
X(妹の相続税額)=(B×C×1.2)/(A-C×1.2)
(注)妹は被相続人の一親等の血族ではありませんから、妹の相続税額については相続税額の2割加算の規定が適用されます(相法18)。