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相続人でない者への負担付特定遺贈の課税関係

被相続人甲の遺言書のうち以下の遺贈内容の記載があります。

①A宅地はX(甲の姪)に遺贈する。

②A宅地が担保となっている銀行借入金はXが負担して支払うものとする。

相続開始時におけるA宅地の相続税評価額は8,000万円、銀行借入金は5,000万円です。

1 受遺者の相続税の課税価格

債務や葬式費用を相続税の計算上控除することができる者は、その債務などを負担することになる相続人又は包括受遺者です。

受遺者Xが遺贈によりA宅地を取得することに伴って負担することとなった債務は受遺者Xの相続税の課税価格の計算上、「債務控除」として控除するのではなく、負担付遺贈により取得した財産からその負担することとなったヒモ付きの債務の額を直接控除し、その控除後の金額を受遺者の相続税の課税価格の計算をすることになります(相基通11の2-7)。

したがって受遺者Ⅹの相続税の課税価格は3,000万円(8,000万円-5,000万円)となります。

2 被相続人甲のA宅地の譲渡所得

譲渡所得の収入金額には、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額も含まれますから、負担付遺贈により受贈者Ⅹが被相続人甲の債務を引き受けたことにより被相続人甲の債務が消滅したという経済的利益は、被相続人甲が負担付遺贈により譲渡したA宅地の譲渡の対価として5,000万円が被相続人甲の譲渡所得の収入金額となり、準確定申告に反映されます(所法36①②、所基通59-2)。

*債務を承継できる立場であれば譲渡所得は生じません(相続人が負担付遺贈を受ける場合又は相続人以外の者が包括遺贈を受ける場合)。

また、本件は遺贈(相続税)の課税局面であるため負担付贈与通達の適用はありません。

3 受遺者Ⅹの取得価額

被相続人甲の相続の開始があった時におけるA宅地の時価のうち、受遺者Ⅹが引き受けた被相続人甲の債務に相当する金額は、被相続人甲の譲渡所得の金額の計算上収入金額に算入され、被相続人甲がA宅地を保有していた期間中にA宅地について発生した評価損益は、A宅地が負担付遺贈により被相続人甲から受遺者Ⅹに移転する際に、被相続人甲の譲渡所得の計算上清算されています。したがって被相続人甲の譲渡所得の計算上収入金額に算入された金額に相当する金額は、受遺者ⅩのA宅地の取得価額に算入されます。

個人に対する対価を伴わない単純な遺贈では、遺贈財産全てについて相続税が課税されるので、受遺者は遺贈者の取得時期と取得価額を引き継ぎます(相法1の3、所法60①)。これに対し、負担付遺贈では、原則として受遺者は支払った対価で当該資産を取得したのですから、実際に支払った金額が、当該資産の取得価額となります。ただし、譲渡価額(負担付遺贈の負担額)が、時価の二分の一未満であり、かつ、遺贈者の取得価額を下回る場合(譲渡損失が計上される場合)は、譲渡者(遺贈者)の譲渡損失はなかったものとみなされ、譲渡者(遺贈者)の取得時期と取得価額は譲受者(受贈者)に引き継がれます(所法60①、所基通60-1)。

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