被相続人である長男を契約者及び被保険者とし、受取人を母とする生命保険契約を締結しました。
その後受取人である母が亡くなり、受取人の再指定をしないまま長男が死亡した場合の死亡保険金の受取人及び保険金受取割合はどのようになるのでしょうか。
生命保険の契約者は、保険会社との保険契約において、被保険者でない第三者を保険金受取人として指定することができます(保険法42)。また、その受取人が死亡したときは、その者に代わる受取人の再指定をすることができ(保険法43①)、受取人が死亡したにもかかわらず契約者が受取人の再指定をしないまま死亡したときは、既に死亡した受取人の相続人が受取人となります(保険法46)。この場合の「受取人の相続人」とは、保険金受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者死亡時において生存する者がこれに該当します(大審院大正11年2月7日判決・民集1巻19頁)。
したがって、この事例では、その保険契約上で母が死亡し、次いで長男が死亡した場合の受取人を定める特約がない限り、保険金受取人は、母の現存する相続人となり、母に二男(契約者の弟)があればその者がなり、長男が契約後に結婚しているのであればその配偶者が受取人(上記判決にいう「順次の相続人」)合計2人となります。長男の配偶者は母の法定相続人ではありませんが、母の法定相続人である長男の順次の相続人(代襲相続人ではない)として受取人としての地位を承継することになります。
これらの保険金受取人の受取割合は、相続分によるのでなく、民法第427条の規定により平等の割合によるとされています。なぜなら、前記の保険法第46条の規定は、指定受取人の地位の相続による承継を定めるものでも、複数の保険金受取人がある場合に各人の取得する保険金請求権の割合を定めるものでもなく、指定受取人の法定相続人という地位に着目して保険金受取人となるべき者を定めるものであって、保険金支払理由の発生により原始的に保険金請求権を取得する複数の保険金受取人の間の権利の割合を決定するのは、民法第427条の規定であるからです(最高裁平成5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4740頁)。