相続人間で分割協議が纏まらず、相続税申告期限になっても遺産が未分割のことがあります。とはいえ申告期限までには申告をしなければならず、その際には相続人間で法定相続分により遺産を取得したものとして申告をすることになります(その後分割協議が纏まってから4ケ月以内に修正申告・更生の請求を行います。)。
では、相続人の内に被相続人から生前贈与として金銭等の特別受益を受けている者があるときに未分割財産の申告はどのようになるのでしょうか。
相続人がA、B、Ⅽの子供3人、相続財産が1億2千万円であるとします。
そのうちAが特別受益として3千万円の生前贈与を受けている場合、遺産額は1億2千万円に特別受益3千万円を加算した1億5千万円がみなし遺産額となり、各人の相続分はAが2千万円(法定相続分5千万円-特別受益分3千万円)、B、Ⅽがそれぞれ5千万円となります(民法第903条)。
次に相続税の対象となる課税価格の計算ですが、生前贈与を受けている特別受益が相続税の課税価格への加算対象期間内に掛かるものか否かにより課税対象額は異なってきます。
つまり、相続開始前7年以内に行われた贈与(令和12年12月31日までに行われた贈与については経過措置があります。)については、課税価格への加算対象期間内の贈与とされ、特別受益者の課税価格に加算されます。
そのためAへの贈与が加算対象期間内であれば相続分の2千万円に特別受益額の3千万円を加算した5千万円が課税価格となりますが、対象期間に掛からない特別受益については加算不要となりAの課税価格は2千万円として計算されます。
民法第903条
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。(注)
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
(注)「住宅資金の非課税等」の贈与税の非課税規定は相続税法上の非課税の規定であって、民法上の相続分の計算では特別受益として持ち戻されることもあります。また、3項により被相続人の意思表示(遺言等)により特別受益とされないこともあります。