相続税の申告期限までに分割協議が纏まらず、また納税資金を確保することが難しいことがあります。
そのため相続財産である不動産や株式を売却して納税資金に充てることがあります。
このようなケースの譲渡所得の申告後に分割協議が調った場合において各相続人の譲渡所得の更正の請求や修正申告は可能なのでしょうか。
譲渡所得の申告は、換価時に換価代金の取得割合が確定しているものと、確定しておらず後日分割されるものにより異なります。
1 換価時に換価代金の取得割合が確定しておらず、後日分割される場合
遺産分割審判における換価分割の場合や換価代金を遺産分割の対象に含める合意をするなど特別の事情がある場合に、換価後に換価代金を分割したとしても、①譲渡所得に対する課税はその資産が所有者の手を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税するものであり、その収入すべき時期は、資産の引渡しがあった日によるものとされていること②相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属し、その共有状態にある遺産を共同相続人が換価した事実が無くなるものではないこと③遺産分割の対象は換価した遺産ではなく、換価により得た代金であることから、譲渡所得は換価時における換価遺産の所有割合(=法定相続分)により所得税の申告をすることになる。
そして、法定相続分により所得税の申告をした後にその換価代金が法定相続分と異なる割合により分割されたとしても、法定相続分による譲渡に異動が生じるものではない(所得税の申告期限において法定相続分による譲渡以外に申告の方法が不可能:未分割のまま不動産を売却した場合、原則としては、その売却代金は法定相続分により各人に帰属しますので、当初の申告は正しいと考えられるためです。)ので、更生の請求及び修正申告をすることはできない。
ただし、所得税の申告期限までに換価代金が分割され、共同相続人の全員が換価代金の取得割合に基づき譲渡所得の申告をした場合には、その申告は認められる。これは、具体的な取得金額が定まった以上、上記1と異なり法定相続分による譲渡以外に申告の方法が可能であるので認められます。
2 未分割財産の譲渡時に換価代金の取得割合が確定している場合
この場合には、換価代金の取得割合を定めることは、換価遺産の所有割合について換価代金の取得割合と同じ割合とすることを定めることにほかならならず、各相続人は換価代金の取得割合と同じ所有割合で換価したのであるから、その譲渡所得は、換価遺産の所有割合(=換価代金の取得割合)に応じて申告することになります。