甲・乙の兄弟は共有登記(持分各1/2)のされているA土地400㎡(時価6,000万円)を所有しています。
甲・乙はA土地をA-1土地(100㎡・時価1,500万円)とA-2土地(300㎡・時価4,500万円)に分割し、甲・乙はそれぞれA-1土地・A-2土地を単独所有とする共有地の分割を予定しています。課税上どのような問題が生じるでしょうか。
1 乙の贈与税
乙が甲から供与を受けた利益は、相続税法7条(低額譲受けによるみなし贈与)の規定により、贈与により取得したものとみなされ、乙が甲から取得した持分の価額である2,250万円(4,500万円×1/2)と甲が乙から取得した持分の価額である750万円(1,500万円×1/2)の差額である1,500万円が乙の課税価格に算入され、贈与税の課税の対象となります。
なお、相続税法7条に規定するみなし贈与に係る利益は、その譲り受けた土地の相続税評価額ではなく、時価(通常の取引価額)に基づいて算定することになります(相法7、平元.3.29直評5通達)。
2 甲・乙の譲渡所得
共有地の分割は、所有権(持分)の移転であるところから、原則として「資産の譲渡」として譲渡所得の課税の対象となります。
(1)共有地の分割(所基通33-1の6)の不適用
共有地の分割が「一の土地の共有持分に応じた現物分割」である場合には、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。しかし、A土地の分割は「共有持分に応じた現物分割」に該当しませんから、A土地の分割についてこの取扱いは適用されません。
(2)固定資産の交換の特例(所得税法58条)の不適用
上記(1)の取扱いが適用されない共有地の分割は、所得税法58条の「交換」として取り扱われます。したがって、A土地の分割が同条の適用要件を満たす場合には、以下のように考えることにより、その分割に係る譲渡所得の金額の計算上、「固定資産の交換の特例」の適用を受けることができます。
「甲は自己が所有するA-2の土地の持分150㎡(2,250万円)を乙に譲渡して乙からA-1土地の持分50㎡(750万円)を取得する。一方、乙からみた場合は、乙が所有するA-1土地の持分50㎡(750万円)を甲に譲渡して甲からA-2土地の持分150㎡(2,250万円)を取得する。」
しかし、A土地の分割により甲・乙間において移転した持分の価額の差額はこれらの持分の価額のうち多い価額の20%を超えており、「固定資産の交換の特例」の適用要件の一つである「交換の時における取得資産の価額と譲渡資産の価額との差額はこれらの価額のうちいずれか多い価額の20%以下であること」という交換差額割合要件(所法58② )を満たさないため、この分割について「固定資産の交換の特例」は適用されません。
(2,250万円―750万円)>2,250万円×20%
(3)甲・乙の譲渡所得の収入金額
A土地の分割については上記(1)、(2)の譲渡所得の課税に関する特例が適用されませんので、甲・乙の譲渡所得の収入金額は、次のようになります( 所法9①十五、36①② )。
①甲の譲渡所得の収入金額
甲は、A土地の分割により、乙に譲渡した持分に代えて乙から750万円(A-1土地の価額1,500万円×1/2)に相当する持分を取得しています。この乙から取得した持分の価額が甲の譲渡所得の収入金額となります。
②乙の譲渡所得の収入金額
乙は、A土地の分割により、甲に譲渡した持分に代えて甲から2,250万円(A-2土地の価額4,500万円×1/2)に相当する持分を取得していますが、このうち1,500万円相当部分は、前記1により贈与により取得したものとみなされて贈与税の課税の対象となりますので、非課税所得に係る収入金額として、甲の譲渡所得の収入金額から除外され、750万円が譲渡所得の収入金額となります。