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代物弁済による課税関係

債務の弁済にあたり、金銭に代わり不動産による代物弁済をした場合の課税関係はどのようになるのでしょう。

不動産による弁済をしたからといって、現金入金がないのに税金がかかるのでしょうか。

この場合には代物弁済の取引を①不動産を売却して、②そのお金で借金を返済したと、取引を2つに分けて考えてみます。

それにより①不動産を売却したことについて譲渡所得が発生することとなります。

このことは、実際に不動産を売却してお金を作り、そのお金で借金を返済した人との均衡をはかるためでもあります。

では、代物弁済をしたときの譲渡収入はいくらになるのでしょうか。

これについては、所得税法36条によりその代物弁済により消滅した債務の金額が基本となります。

たとえば、5,000万円の借金があって、その返済のためにある不動産を代物弁済に充てたとなれば、5,000万円が譲渡所得の収入金額となります。

では、その不動産の時価が、債務の金額よりも低い場合、あるいは高い場合はどうなるのでしょうか。

1 「譲渡(取得)資産の時価<消滅債務(債権)の額」の場合

(1)債務者の課税関係

先ほどの例で、借金5,000万円の返済のために、代物弁済した不動産の時価は4,000万円であったが、これで借金を帳消しにしてもらったようなケースです。

この差額の1,000万円は、債務の返済を免除されたということで債務免除益となり、原則、一時所得として課税されることになります。

(2)債権者の課税関係

代物弁済により取得した不動産の取得価額は債務者の譲渡収入である4,000万円となります。また、消滅債権との差額1,000万円についての損失が生じますが、この損失については貸倒れと認められるものであれば貸倒損失となり,認められないものである場合には,その損失は課税上何ら考慮されません。

2 「譲渡(取得)資産の時価>消滅債務(債権)の額」の場合

(1)債務者の課税関係

 では、逆に不動産の時価の方が高い場合はどうなるのでしょうか。

先ほどの例で、借金5,000万円の返済のために充てた不動産の時価が6,000万円であったとします。

この差額1,000万円について、清算金として支払いを受けた場合には、譲渡所得の収入金額に加算することになります。

差額を清算しない場合は、利息の条項により、利息と認識するケースもあります。

あるいは、相手に対する贈与になる可能性もあります。この場合には、相手方の贈与相当分については譲渡収入となりません。

(2)債権者の課税関係

代物弁済により取得した不動産の取得価額は債務者の譲渡収入である6,000万円となります。また、消滅債権との差額1,000万円についての利益が生じます。

この利益は,金銭債権の貸付けに伴って生じたものであり,その経済的実質は利息とみるべきものですから,その金銭債権が事業所得上生じたものである場合には,その利益は,事業所得の金額の計算上総収入金額に算入され,その他の場合には,雑所得の金額の計算上総収入金額に算入されます。

ただし,債務者が債権者に対し利益を与える意思をもって代物弁済を行ったと認められる場合には,債権者が受ける利益は,贈与による利益として,債務者が個人であるときは贈与税の課税対象とされ,債務者が法人であるときは一時所得として所得税の課税対象になると思われます(債務者の譲渡収入は5,000万円となり、債権者の取得価額も5,000万円となる。)。

なお,取得資産の時価と消滅債務の額との差額について清算が行われるとした場合には,その差額についての課税問題は生じません。

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