土地の売買契約において時価1,000である土地を1,500で購入した場合であっても,相手方に利益を供与するものでないときは,土地の取得価額は1,500とされます。
交換により取得した土地の取得価額でも同じことが言えるのでしょうか。
1 交換取得資産の取得価額
交換取得資産の取得価額は,その交換取得資産のその交換の時における時価に相当する金額を基礎として計算した金額とされるのが原則(※)です(所令126①四)。
だとすれば、上記の取得価額は1,000となります。
しかし、A土地(時価1,000)を取得するために,B土地(時価1,500)を提供して等価交換を行った場合で,その取引が経済的合理性の下に行われたものであり,交換相手に利益を供与するものでないと認められるときは,B土地はA土地を取得するための対価にほかなりませんから,A土地の取得価額は交換により譲渡したB土地の時価に相当する金額1,500とされます。
言い換えれば,交換によりA土地を取得した者にとっては,A土地はB土地と同等の価値があると認識して交換をしたものですから,A土地の取得価額はB土地の交換時の時価に相当する金額を基礎として算定すべきものであり、このことは、不利な交換をすると認められる者の有する交換譲渡資産の価額が交換当事者の合意価額(譲渡時の時価)となることと言えます。
※交換により取得した交換取得資産の取得価額については特例が設けられています(所令168)
2 交換譲渡資産の譲渡収入
交換取得資産の取得価額に関連して問題となるのは,交換譲渡資産の譲渡所得の収入金額です。
交換譲渡資産の譲渡所得の収入金額は,交換取得資産の交換時の時価に相当する金額(交換差金を交付する交換にあってはその交換差金を減算した金額,交換差金を取得する交換にあってはその交換差金を加算した金額)とされるのが原則(※)です(所法36①②)。
しかし,交換譲渡資産の交換時の時価(交換差金を交付する交換にあってはその交換差金の額を加算した金額,交換差金を取得する交換にあってはその交換差金の額を減算した金額)が交換取得資産の交換時の時価を超える場合には,交換譲渡資産の譲渡所得の収入金額は,交換取得資産の交換時の時価に相当する金額(交換差金を交付する交換にあってはその交換差金の額を減算した金額,交換差金を取得する交換にあってはその交換差金の額を加算した金額)ではなく,交換譲渡資産の交換時の時価に相当する金額と解すべきです。
このように理解しなければ,交換差金を加味した後の交換取得資産の取得価額と交換譲渡資産の収入金額は一致しないことになります。また、このことは交換譲渡者にキャピタルゲイン課税された収入金額が、交換取得者の交換取得価額として付け替えられることになります。
※交換により譲渡した資産の譲渡所得の収入金額については特例が設けられています(所法58①)。
【設例】
交換譲渡資産:甲所有A土地(通常の取引価額:10,000万円)
交換取得資産:乙所有B土地(通常の取引価額:7,000万円)
【判定】
(1)等価交換の場合
①不利な交換をする者=甲
(A土地の価額)10,000万円 > (B土地の価額)7,000万円
②甲・乙の合意価額
A土地の価額:10,000万円 B土地の価額:10,000万円
③交換資産の価額の差額
(A土地の価額)10,000万円 ―(B土地の価額)10,000万円 = 0
④交換差額割合
0 / 10,000万円 = 0% ≦ 20%
⑤甲・乙の仕訳(交換特例の適用がない場合)
(甲の仕訳)
譲渡原価 ××× / A土地 ×××
(乙の仕訳)
A土地 10,000万円 / 収入金額 10,000万円
譲渡原価 ××× / B土地 ×××
(2)交換差金(乙⇒甲)が2,000万円の場合
①不利な交換をする者=甲
(A土地の価額:10,000万円)> (B土地の価額:7,000万円 + 交換差金:2,000万円)
②甲・乙間の合意価額
A土地の価額:10,000万円 B土地の価額:8,000万円(A土地の価額:10,000万円 - 交換差金:2,000万円)
③交換資産の価額の差額
(A土地の価額)10,000万円 - (B土地の価額)8,000万円 = 2,000万円
④交換差額割合
2,000万円 / 10,000万円 = 20% ≦ 20%
⑤甲・乙の仕訳(交換特例の適用がない場合)
(甲の仕訳)
B土地 8,000万円 / 収入金額 10,000万円
現預金 2,000万円
譲渡原価 ××× / A土地 ×××
(乙の仕訳)
A土地 10,000万円 / 収入金額 8,000万円
現預金 2,000万円
譲渡原価 ××× / B土地 ×××
(3)交換差金(乙⇒甲)が4,000万円の場合1
①不利な交換をする者=乙
(A土地の価額:10,000万円)< (B土地の価額:7,000万円 + 交換差金:4,000万円)
②甲・乙間の合意価額
A土地の価額:11,000万円(B土地の価額:7,000万円 + 交換差金:4,000万円)
B土地の価額:7,000万円
③交換資産の価額の差額
(A土地の価額)11,000万円 - (B土地の価額)7,000万円 = 4,000万円
④交換差額割合
4,000万円 / 11,000万円 = 57.1% > 20%
⑤甲・乙の仕訳(交換特例の適用がない場合)
(甲の仕訳)
B土地 7,000万円 / 収入金額 11,000万円
現預金 4,000万円
譲渡原価 ××× / A土地 ×××
(乙の仕訳)
A土地 11,000万円 / 収入金額 7,000万円
現預金 4,000万円
譲渡原価 ××× / B土地 ×××
(4)交換差金(甲⇒乙)が1,000万円の場合
①不利な交換をする者=甲
(A土地の価額:10,000万円 + 交換差金:1,000万円)> (B土地の価額:7,000万円)
②甲・乙間の合意価額
A土地の価額:10,000万円 B土地の価額:11,000万円
③交換資産の価額の差額
(B土地の価額)11,000万円 - (A土地の価額)10,000万円 = 1,000万円
④交換差額割合
1,000万円 / 10,000万円 = 10% ≦ 20%
⑤甲・乙の仕訳(交換特例の適用がない場合)
(甲の仕訳)
B土地 11,000万円 / 収入金額 10,000万円
現預金 1,000万円
譲渡原価 ××× / A土地 ×××
(乙の仕訳)
A土地 10,000万円 / 収入金額 11,000万円
現預金 1,000万円
譲渡原価 ××× / B土地 ×××