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三者間における負担付贈与の課税関係

 父と長男及び次男の間で①父が長男に住宅取得資金として5,000万円を贈与する②長男は①の代償として、長男が所有しているA土地(相続税評価額2,000万円)を次男に贈与するという契約があるときの課税関係を考えます。

 父から長男への住宅取得資金の贈与は、長男が次男に対しA土地を給付するという債務を負担することにより成立した「負担の利益が第三者に帰属する負担付贈与」となり、長男から次男へのA土地の給付は、長男・次男間の贈与契約に基づく給付ではなく、父と長男間での負担付贈与において長男が負担した債務の履行としての給付と考えられます。

1 長男の贈与税

 相続税法上、負担付贈与の贈与税の課税価格についての金額は規定はありませんが、相続税法基本通達21の2-4において「負担付贈与に係る贈与財産の価額は、負担がないものとした場合における当該贈与財産の価額から当該負担額を控除した価額によるものとする」と規定されています。

 したがって、長男の贈与税の課税価格に算入される金額は、父から贈与を受けた金銭5,000万円からA土地の相続税評価額2,000万円を控除した残額3,000万円となります。

2 次男の贈与税

 父が長男に対して住宅取得資金を贈与することに基因して次男が無償で土地Aを取得する利益は、民法上の贈与により取得したものではありませんが、相続税法上は次男が父からの贈与により取得したものとみなされます(相法9)。

 したがって、次男が長男からA土地の給付を受けたことによる利益の価額に相当する金額は、父から贈与により取得したものとみなされて贈与税の課税の対象となり、次男の贈与税の課税価格に算入される利益の額はA土地の相続税評価額2,000万円となります。

3 長男の譲渡所得

 長男から次男に対するA土地の給付は、父と長男が締結した負担付贈与契約において長男が負担した債務(A土地を次男に給付すべき債務)の履行として行われたものですから、A土地の給付は当該債務の消滅による経済的利益を対価とする有償譲渡に該当し、譲渡所得の課税対象となります(所法36①)。

 長男が負担したA土地を次男に給付すべき債務の額は、その給付の時におけるA土地の通常の取引価額(時価)に相当する金額ですから、A土地の譲渡所得の収入金額は、A土地を次男に給付することにより消滅する債務の額(その給付の時におけるA土地の通常の取引金額に相当する金額)に相当する金額となります(所法36②)。

 * 長男が負担付贈与により取得した住宅取得資金に係る贈与税の課税価格の計算上、その住宅取得資金の額から控除される負担の額は、A土地の相続税評価額に相当する金額とされますが、長男のA土地の譲渡所得の金額の収入金額(債務の消滅による経済的利益の額)は、A土地の通常の取引価額(時価)に相当する金額とされます(所法36②)。* 長男が負担付贈与により取得した住宅取得資金に係る贈与税の課税価 格の計算上、その住宅取得資金の額から控除される負担の額は、A土地の相続税評価額に相当する金額とされますが、長男のA土地の譲渡所得の金額の収入金額(債務の消滅による経済的利益の額)は、A土地の通常の取引価額(時価)に相当する金額とされます(所法36②)。

4 次男のA土地の取得価額

 個人から贈与により取得した譲渡所得の基因となる資産については、その資産の取得時期及び取得価額は、贈与者の取得時期及び取得価額を引き継ぐものとされています(所法60①)。この取得時期及び取得価額の引き継ぎが行われる資産は、民法上の贈与により取得した資産に限られ、相続税法上のみなし贈与の対象となる利益に係る資産については、取得時期及び取得価額の引き継ぎは行われません。

 次男が取得したA土地は、民法上の贈与により取得したものではありませんから、その取得時期は、長男からA土地の引渡しを受けた時となり、その取得価額は、その引渡しを受けた時におけるA土地の通常の取引価額(時価)に相当する金額となります。

5 相続時精算課税の適用

 長男が父から受けた住宅取得資金の額のうち贈与税の課税価格に算入される金額は2,000万円ですから、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(措法70の2)の要件を満たしていれば1,000万円は非課税(令和2年4月1日~令和3年3月31日・一般住宅の取得)とされ、差額2,000万円については相続時精算課税を選択することができます(措法70の3)。

 また、次男が対価を支払わずにA土地を取得したことによる利益も、父が長男に対し住宅取得資金を贈与することに基因して受けた利益ですから、父から贈与により取得したものとみなされ相続時精算課税を選択することができます。

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