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遺産分割における第三者所有土地の譲受け

兄弟間の遺産分割協議において、兄(甲)が代表を務める会社(X社)が所有する時価5,000万円(相続税評価額4,000万円)の土地(A宅地)を弟(乙)が2,000万円で譲り受けるという要件で分割協議が成立しました。

乙はA宅地を自宅の敷地としてX社より使用貸借により使用しています。

第三者が所有する土地を相続の場面において相続人へ譲渡する場合どのような課税関係が生じるのでしょうか。 

相続人乙が極めて有利な価額でX社から同社所有のA宅地を購入する売買契約を締結したことは,相続人甲が同社の代表取締役という地位にあってのみ可能な取引であり,また,乙とX社とのA宅地の売買契約は,遺産分割協議の成立と同時に締結されていることから,その売買契約の締結は,遺産分割協議において内々に合意された代償分割の履行として行われたものであるとして次のように解されます。

「甲はX社所有のA宅地を取得し,乙に対し,代償分割としてそのA宅地を2,000万円で譲渡する。」

相続人乙が極めて有利な価額でX社から同社所有のA宅地を購入する売買契約をこのように解した場合には,A土地の時価を5,000万円と仮定すると,A宅地のX社から乙への移転に関する課税関係は,次のような処理となります。

1 X社の課税関係

法人がその法人の役員に対して資産を時価よりも低い対価の額で譲渡し,その資産の時価と対価の額の差額に相当する経済的利益を供与したと認められる場合には,法人税の課税上,その差額に相当する金額は益金に算入されるとともに,その差額に相当する金額はその役員に対し支給した給与とされます。この場合,その給与が定期同額給与,事前確定届出給与又は利益連動給与のいずれにも該当しない場合には,その給与は損金の額に算入されません(法法22②、34①④)。

X社については,A土地を譲渡した日の属する事業年度の法人税の課税上,A土地の時価に相当する金額5,000万円とその譲渡の対価の額2,000万円との差額に相当する金額3,000万円は益金に算入され,代表取締役乙に支給したその差額に相当する金額3,000万円は,損金不算入の給与として取り扱われます。

2 甲の所得税

法人の役員がその法人から資産を時価よりも低い対価の額で譲り受け,その資産の時価と対価の額の差額に相当する経済的な利益を享受したと認められる場合には,その経済的な利益の額は,その役員の給与所得の収入金額に算入され,その役員は,その資産を時価に相当する金額により取得したものとされます(所法36①②)。

甲がA土地の取得に際しX社から享受したA土地の時価に相当する金額5,000万円とその譲受けの対価の額2,000万円との差額に相当する金額3,000万円は,甲の給与所得の収入金額として所得税の課税の対象となり,甲はA土地を5,000万円で取得したことになります。

3 甲・乙の相続税

代償分割の方法により遺産の分割が行われた場合には,乙は相続税評価額4,000万円のA宅地を乙に対して2,000万円で譲渡するというその差額2,000万円の代償債務を負担し,乙は相続税評価額4,000万円のA宅地を甲から2,000万円で譲り受けるというその差額2,000万円の代償債権を取得することになります。

甲が負担する代償債務の額2,000万円は,甲の相続税の課税価格から減額し,乙が取得する代償債権の額2,000万円は,乙の相続税の課税価格に加算することになります。

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