賃貸物件を年の中途で売却した場合、その物件にかかる固定資産税及び買主から受ける固定資産税精算金は所得税の計算上どのように考えるのでしょうか。
不動産の譲渡に伴い買受人から受取る固定資産税精算金の帰属について争われた以下の裁決があります。
[国税不服審判所平成14年8月29日裁決・裁決事例集No.64-152頁〕
請求人は、土地の譲渡に際して買受人から収受した売却後の期間に対応する未経過固定資産税等相当額について、固定資産税等が期間コストの性質を有することを前提に、収受した金員は、実質的には立替金の精算であり、担税力を有するものではなく、このことは、未経過固定資産税等相当額について不当利得等返還請求権が発生することからも裏付けられるとして、譲渡所得の収入金額に算入すべきでない旨を主張します。
しかしながら、固定資産税等は、賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産税台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり(地方税法359)、賦課期日後に所有者の異動が生じたからといって、課税関係に変動を来すものではないから、賦課期日後に当該資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではなく、また、譲渡人は、譲受人に対して未経過固定資産等の求償権を取得するものでもないとして、不動産所得における固定資産税計上額には影響しないことを示唆しています。また、未経過固定資産税等相当名目の金員の授受は、当事者の契約によって初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであり、その性質は売買条件の一つにほかならず立替金の精算とはいい得ないとし、その授受に法的根拠があるわけではなく、それは売買当事者間の取引案件として約定されるに過ぎないものであって、譲渡対価に含まれることが相当として、譲渡所得の総収入金額への算入を相当としています。重ねて、固定資産税等名目の金員の授受を行うとの取決めがなされるのであれば、その授受は、まさに契約に基づいて行われるものであるから、固定資産税等名目で譲渡の際に授受された金員の性質が不当利得返還請求権の性質を有することもあり得ないとして一時所得への帰属も否定しています。