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財産分与に関する課税関係

1 財産分与の性質

離婚に際し,夫婦の一方は,他方に対し,財産分与の請求ができます(民法768条)。

財産分与には①夫婦の婚姻期間中に形成された共有財産の清算(清算的財産分与)、②慰謝料としての財産分与、③離婚後の相手の生活扶助のための財産分与(扶養的財産分与)の要素があるとされています。

2 税務上の課税関係

財産分与の性質は上記の通りですが、税務上は財産分与の性質により課税の差は特段設けておらず、財産を交付した側と受けた側で課税関係が異なります。

(1)財産を受けた側

離婚により相手方から財産を受けた場合、通常、贈与税がかかることはありません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです(注1)。ただし、取得した財産の額が財産分与として受け取るべき適正金額を超えている場合は、その超えている部分に対して贈与税が課されます。

(注1)慰謝料的性質として財産分与を受けた場合は、心身に加えられた損害に起因して取得するものとして非課税   扱いが明確である一方(所法9①18)、共有財産の清算として取得したものに関しては非課税の明文はありませんが、共有財産の清算という意味合いから経済的利益が生じたものではないと考えられるので、課税されることはありません。

(2)財産を交付した側

慰謝料として譲渡所得の基因となる資産が相手方に移転した場合には,その移転は,財産を交付した者(加害者)の有する損害賠償債務の消滅という経済的な利益を対価とする有償譲渡に該当し,その移転時におけるその資産の時価に相当する金額が譲渡所得の収入金額となります(所法36②)。

財産分与として譲渡所得の基因となる資産が離婚をした者の一方から相手方に移転した場合には,その移転は,離婚により生じた財産分与義務に基づく当事者間の協議等により確定した債務の消滅という経済的な利益を対価とする有償譲渡に該当し,その移転時におけるその資産の時価に相当する金額が譲渡所得の収入金額となります(所法36②、所基通33-1の4)。

配偶者への居住用不動産の移転が離婚後に行われた場合には,この資産の移転は特殊関係者への譲渡には該当しませんから,居住用財産の譲渡所得の3,000万円控除の特例(措法35)・税率軽減の特例(措法31の3)における他の要件を満たす場合には,その譲渡所得については,これらの特例の適用を受けることができます(措通31の3-23、35-5)。

なお、財産分与にあたり、不動産の所有権移転と同時に債務引受が行われた場合も、譲渡所得の収入金額は当該不動産の時価となり、債務の引受額が譲渡所得の収入金額に影響を与えることはありません。

(3)財産分与として取得した不動産を譲渡した場合の譲渡所得の計算

財産分与として取得した不動産を譲渡した場合の不動産の取得費ですが、離婚協議書の記載金額や財産分与した相手方の譲渡所得計算上の収入金額(財産分与時の時価)で計算することになります(所基通38-6)。

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