株式を相続により取得した者が、その株式と同一銘柄の株式を有している場合において、特例適用期間内(相続税の申告期限から3年以内)に、これらの株式の一部を譲渡したときには、その譲渡については、相続により取得した株式の譲渡からなるものとして、相続税の取得費加算の特例を適用できるのでしょうか。
例えば父の相続開始前から相続人である長男が父の相続により取得した株式と同一銘柄の株式を有している場合、その後に譲渡された株式は、長男が父の相続開始前から既に有している株式から先に譲渡されたものとして、特例期間内の株式譲渡であってもその譲渡された株式の全部又は一部について「相続税の取得費加算の特例」について適用できないのではないかとの疑問があります。
そのことについて、租税特別措置法関係通達39-12においては「譲渡所得の基因となる株式を相続等により取得した個人が、当該株式と同一銘柄の株式を有している場合において、措置法第39条第1項に規定する特例適用期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、当該相続等により取得した株式の譲渡からなるものとして、同項の規定を適用して差し支えない。」とされています。
そのため相続開始前から相続人固有の財産として相続により取得した株式と同一銘柄の株式を保有していたとしても、相続により取得した同一銘柄の株式について「相続税の取得費加算の特例」を適用することができます。
このような取扱いとしていることについては、平成24年4月17日文書回答事例「相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用関係について(相続開始前に同一銘柄の株式を有している場合)」)において、①同一銘柄の株式については、相続財産であっても相続人固有の財産であっても、その資産としての性質は同一であり、いずれを譲渡したとしても、これを区別して特例の適用を判断する合理的理由に乏しいこと(相続により取得した株式を譲渡したことが明らかであることを条件に特例の適用を認めることは現実的ではないこと。)②所得税基本通達33-6の4《有価証券の譲渡所得が短期譲渡所得に該当するかどうかの判定》における長期・短期の区分に係る取扱い(先入先出法による判定)は、いずれの株式から譲渡したかが判然としない場合に、納税者有利に取り扱うこととするものと考えられるところ、これを取得費加算の特例に準用すると、納税者にとって不利になる場合があることと説明されており、みなし配当課税の特例と取得費加算の特例は、ともに相続税納付のための相続財産の譲渡に係る課税の負担軽減を目的とし、取得費加算の特例と同様に、みなし配当課税の特例においても相続等により取得した非上場株式の発行した株式から優先的に譲渡したものとして取り扱うこととされています。