相続税の計算では、相続等により取得したプラスの財産から債務等のマイナスの財産を控除して課税価格を計算します。
相続財産に加算される生前贈与には相続開始前3年(令和6年1月1日以降の贈与については7年)以内の暦年贈与と相続時精算課税の適用財産がありますが、相続税の計算では債務控除の適用において両者の取扱いは異なります。
1.暦年贈与財産と債務控除
相続開始前3年以内に行われた贈与によって取得した贈与財産は相続財産に含まれることになり相続税の課税対象となりますが、元々相続又は遺贈で取得した財産ではないため、債務控除の対象となるプラスの財産には含まれません(相続税法19条)。
また相続税法基本通達19-5において、相続開始前に贈与によって取得し、相続税の課税価格に加算されたその贈与財産の価額については債務控除ができない旨規定されています。このことは、たとえ債務の方が相続財産よりも多く差引き金額がマイナスになったとしても贈与によって取得した財産との相殺ができないことを意味します。
2.相続時精算課税適用財産と債務控除
相続時精算課税適用財産も暦年贈与財産と同様に相続税の計算対象とされますが、このことは相続税法21条の15第1項において「相続時精算課税適用者が相続・遺贈により財産を取得した場合には, 相続時精算課税適用財産の価額を相続税の<課税価格に加算>して 相続税の課税対象とする。」と表記されています。
この<課税価格に加算>という表記は、暦年贈与財産と同様に債務額との相殺ができないのではないかとの疑問が生じます。
そのため同条第2項において、「相続税法第13条(課税価格に算入すべき価額は相続又は遺贈により<取得した財産>から債務・葬式費用を控除した金額による。)の<取得した財産>とあるのは「取得した財産(本来の相続財産)及び相続時精算課税の適用を受ける財産とする。」との読替え規定を設けることにより本来の相続財産と同じく相続時精算課税適用財産についても債務控除適用後の金額を課税価格としています。
3.相続税申告書での計算表記
相続税申告書第1表における計算手順の表記では、「純資産価額」④=「取得財産の価額」①+「相続時精算課税適用財産の価額」②―「債務及び葬式費用の金額」③とされており、「純資産価額」④がマイナスの時は0とされ、債務超過分は切捨てられ、その純資産価額に暦年課税の贈与財産が「純資産価額に加算される暦年贈与分の贈与財産の価額」として⑤の欄で加算され「課税価格」⑥が導かれます。