家屋の評価はその固定資産税評価額に自用家屋であれば1.0を、貸家であれば0.7の倍率を乗じて計算した金額による取扱いとなっています(評基通89,93)。
しかしながら建物の建替え中に相続が開始した場合には固定資産税評価額の基となる家屋自体が、取壊し中若しくは建築中の状態であるため、取壊し前の建物の固定資産税評価額を用いるのか、若しくは固定資産税評価前の建替え予定の建築予定価額によるのかという疑問が生じます。
以下に完成前の各段段階における評価方法を検討します。
1 自用家屋
(1)取壊し中
取り壊し工事を行っている家屋は通常売買取引の対象になるとは考えられず、家屋の市場価値(時価)は零であり、経済的価値を有しているとは認められないため相続財産には含まれないと考えるのが相当です。また家屋の取壊し契約に係る未払金については課税価格から控除する債務に該当するものと考えられます。
(2)建築中
建築中の家屋については財産評価基本通達91に「課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価する。」とされ、一般的には工事請負契約金額に工事進捗率を乗じた金額の70%により評価することになります。
(3)完成後(固定資産税評価額が付される前)
固定資産税評価額の付されていない家屋の評価方法については、評価通達等に定めはなく、評価方法の定めのない財産の評価(財産評価基本通達5)による評価額の算定となります。
財産評価基本通達5による原則的評価方法は、その家屋に類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基にして、条件等の差を考慮したうえで評価額をすることになります。しかしながら付近の類似した家屋を見つけることは極めて困難であるため、(2)と同様に完成費用現価の70%相当額で評価するのが適当と思われます。
2 貸家
(1)取壊し中
自用家屋と同様に経済的価値を有しているとは認められないため、評価額は零とされ、取壊し契約未払金については相続債務として課税価格から控除するものと考えられます。
(2)建築中、完成後(賃貸借契約前)
建物が建築中の場合、若しくは賃借人との賃貸借契約前の完成建物には、借家権としての30%を費用現価の70%から減額して評価することはできません。そのため、自用家屋と同様に費用現価の70%評価となります。
(注)建替え前の建物と建替え後の建物にわたって賃貸借契約と締結したとしても、建築中の建物に賃借人が現に居住し使用することができず、賃借人の建物に対する使用収益権である借家権及び同建物の敷地に対する敷地利用権は存在しないものと考えられます。