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居住用家屋の一部取壊しと特別控除の適用

居住用家屋の一部を取り壊し、その部分の敷地を譲渡した場合に、その譲渡した部分に居住用財産の3,000万円の特別控除(措法35条1項)は適用できるのでしょうか。

1.措置法35条1項の設定趣旨

東京地方裁判所平成20年(行ウ)第578号(以下、「東京地裁H20(行ウ)第578号」という。)をそのまま引用する。

「措置法35条1項に定める本件特別控除は、個人が自ら居住の用に供している家屋又はその敷地等を譲渡するような場合は、これに代わる居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、担税力も高くない例が多いことなどを考慮して設けられた特例であると解される。」

2.措置法35条1項適用の判断基準

「個人が、居住用家屋の敷地の一部を更地として譲渡するために当該家屋の一部を取り壊し、その取壊し部分の敷地の譲渡をした場合については、措置法35条1項の文理のほか、建物の所有権その他の権利の対象としての特性に照らし、同項にいう家屋の譲渡が当該家屋の全体の譲渡を意味するものと解されることを勘案すると、当該家屋の全体が取り壊された場合と当然には同列に論じ難いが、この一部の取壊しが当該部分の敷地を更地として譲渡するために必要な限度のものであり、かつ、上記の取壊しによって当該家屋の残存部分がその物理的形状等に照らし居住の用に供し得なくなったということができるときは、当該家屋の全体が取り壊された場合に準ずるものとして、当該譲渡につき措置法35条1項を適用し得ると解される。」(東京地裁H20(行ウ)第578号)

一部譲渡についての適用可否の判断基準として租税特別措置法関係通達31の3-10があります。

措通31の3-10「その居住の用に供している家屋又は当該家屋でその居住の用に供されなくなったものを区分して所有権の目的としその一部のみを譲渡した場合又は2棟以上の建物から成る一構えのその居住の用に供している家屋のうち一部のみを譲渡した場合には、当該譲渡した部分以外の部分が機能的にみて独立した居住用の家屋と認められない場合に限り、当該譲渡は、措置法第31条の3第1項に規定する譲渡に該当するものとする。」

3,000万控除は家屋の一部譲渡により残部が機能的に独立した家屋と認められないときにも適用されますが、居住用財産を譲渡するような場合は、これに代わる居住用財産を取得しなければならないのが通常であること、担税力も高くないこと等を考慮して設けられた政策税制であり、家屋の一部を取壊し、土地の譲渡後も残存部分で居住を継続できる場合にまで特例を認めることは妥当ではありません。

例えば残った家屋にトイレ、台所、浴室などがある場合、譲渡した部分が居住用財産に該当せず、その譲渡については3,000万円の特別控除の適用を受けることができません。

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