親族間あるいは個人とその関係会社間などの特殊関係者間における不動産取引で問題になるものとして、低額譲受けによるみなし贈与課税があります。
相続税法7条 では、個人が他の個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産を譲り受けた個人は、その財産の譲受けがあった時において、その対価とその譲り受けた時のその財産の時価との差額に相当する金額をその財産を譲渡した個人から贈与により取得したものとみなす旨を規定しています。
では、著しく低い価額の対価とみなされる判断基準はあるのでしょうか。
税務当局は、相続税法7条の低額譲受けに係るみなす贈与の判定の基礎となる「著しく低い価額」についての指針は明らかにしていません。
この「著しく低い価額」の判定については、取引相場のない株式に関するものではありますが、次のような判決があります。
○平17.10.12/東京地裁 財産の客観的交換価値は,必ずしも一義的に明確に確定されるものではないところから,課税実務上は,評価通達の定めによって評価した価額をもって時価とすることとされており,評価通達に定められた評価方法が合理的なものである限り,これは時価の評価方法として妥当性を有するものと解される。そこで,これを相続税法7条との関係でいえば,評価通達に定められた評価方法を画一的に貫くことが実質的な租税負担の公平を著しく害する結果となるなどこの評価方法によらないことが正当と是認されるような特別の事情のない限り,評価通達に定められた合理的と認められる評価方法によって評価された価額と同額か,又はこれを上回る対価をもって行った財産の譲渡は,相続税法7条にいう「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に該当しないものというべきである。 |
また、宅地の各年分の相続税評価額の算定に使用される「路線価」がその年1月1日における宅地の時価(通常の取引価額)の80%相当額として設定されていることは、税務当局も認めているところですから、時価の80%相当額以上の対価による宅地の譲渡は、「著しく低い価額」の対価による譲渡には該当しないといえるでしょう。
以上のことに照らし、宅地取引における対価は、路線価評価額を下回るものでなければ、みなし贈与として贈与税の課税問題は生じないものと考えられます。