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借地権の存否

被相続人甲の長男乙は、甲所有のA宅地の上にB共同住宅を建築して賃貸に供しています。

甲と乙との間には共同住宅が完成した10年前に交わした賃貸借契約書があり、長男乙はこの賃貸借契約締結時から、その賃貸借契約書に基づき、毎年12月に年間地代として200万円を乙の預金口座から甲の預金口座に振り込んでいますが、借地権の設定の対価としての権利金は支払いはなく、贈与税の申告もしておりません。

年間地代200万円は、賃貸借契約を交わした10年前の路線価に基づいて算定したA土地の底地価額の6%相当額です。

なお、共同住宅の建築資金は、A土地を担保として乙が銀行から借り入れたものです。

甲の相続においてA土地を貸宅地として評価は可能でしょうか。

1 借地権の有無の判定

相続税における財産評価において,「借地権」とは,建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権(借地借家法2一)をいいます。

今回のケースは親子間における土地の賃貸借ですが、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約が存在する場合には,その土地の賃貸借が親子間において行われているものであっても次の事実を証拠書類に基づいて明らかにすることができれば,貸宅地としての評価は可能となります。

① A宅地上のB共同住宅は,その建築時から長男乙が所有するものであること

② B共同住宅の所有を目的とするA土地の賃貸借契約が存在すること

③ A土地の賃貸借契約に定められている地代が世間相場並みの地代であること

④ ③の地代が支払われていること

①・②については,登記事項証明書及び賃貸借契約書による確認、③の地代の額については,相続税・贈与税における世間相場並みの通常の地代の年額はその土地の底地としての相続税評価額の6%に相当する金額として取り扱われていますので,地代の額については問題がありません。④の地代の支払いの事実については,乙の預金口座から甲の預金口座に毎年200万円が振り込まれているという金銭の流れが認められます。

これにより、A土地の貸借を賃貸借ではなく使用貸借であると認定することには無理があるでしょう。

2 借地権設定時の贈与税

借地権の取引慣行のある地域における個人間の借地権の設定が無償で行われた場合には,借地権者は土地所有者から借地権の価額に相当する利益の贈与を受けたものとみなされ,借地権者について贈与税の課税問題が生じます( 相法9 )。

長男乙は贈与税の申告をせず,税務当局も贈与税の決定することができる期間内(申告書の提出期限から7年)に決定をしなかった場合には贈与税について課税漏れが生じたことになります( 国税通則法70①⑤)。

しかしながら、この借地権の設定に係る贈与税について課税漏れがあったということは,乙が有する借地権に影響を与えるものではありません。A宅地の相続税評価額は,借地権の存する宅地(貸宅地)として評価することができます。

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