一次相続に係る相続税について、遺産分割が未了であったため法定相続分により申告した宅地について二次相続が開始した場合に、二次相続の相続人が当該宅地の一次相続における法定相続分を小規模宅地等の特例対象宅地として申告した場合に、この宅地は小規模宅地等の評価減の特例適用を受けることができるのでしょうか。
1 分割されていない宅地等の意義
措置法第69条の4 第4項は,「相続税の申告期限までに共同相続人によって分割されていない特例対象宅地等」については,小規模宅地等の評価減の特例を適用しない旨を定めています。
分割されていない特例対象宅地等を小規模宅地等の評価減の特例の対象となる特例対象宅地等から除外している趣旨は,遺産分割による最終的帰属者が確定していない宅地等を小規模宅地等の評価減の特例の適用の対象から除外することにありますから,二次相続における遺産分割により取得した財産であっても,それが一次相続における未分割財産に係る相続分である場合には,その未分割財産に係る相続分の対象となっている特例対象宅地等は,小規模宅地等の評価減の特例の対象にはならないものと解されます。
未分割財産に対して共同相続人が有する相続分は,未分割財産全体に対して有する抽象的な割合にすぎませんから,一次相続の未分割財産に係る法定相続分を二次相続に係る遺産分割において二次相続人が取得したとしても,一次相続の未分割財産中の宅地の法定相続分を最終的に取得したことにはなりません。
したがって,二次相続における遺産分割において二次相続人が一次相続における未分割財産に係る相続分を取得しても,一次相続における未分割財産である相続分相当の宅地は,分割されていない特例対象宅地等に該当し,相続税の申告の段階では,小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けることはできません。
2 一次相続の遺産分割が二次相続の申告期限後に行われた場合
上記のように,小規模宅地等の評価減の特例は,相続税の申告期限までに共同相続人によって分割されていない特例対象宅地等については,適用されないのが原則ですが,相続税申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することにより,相続税の申告期限から3年以内に遺産が分割された場合には,その分割された特例対象宅地等については,小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けることができます( 措置法69の4 ④)。適用を受ける場合は、分割が行われた日の翌日から4か月以内に「更生の請求」を行います(相法32)。
3 分割が行われた日
上記2の「分割が行われた日」とは,更正の請求の対象となる相続税に係る相続における遺産分割が行われた日をいいますから,今回の場合は、一次相続に係る遺産分割が行われた日ではなく,二次相続に係る遺産分割が行われた日となりますが,「分割が行われた日」とは,遺産分割の対象となった財産の帰属についてその効力が生じた日をいうものと解すべきでしょう。
今回の場合には,既に行われている二次相続に係る遺産分割において,二次相続人は一次相続に係る未分割財産に対する相続分に係る財産を取得するということは確定していますが,一次相続に係る遺産分割が行われるまでは,一次相続における未分割財産のうち二次相続人が取得することとなる具体的な財産は確定していませんから,一次相続に係る遺産分割が行われたことにより二次相続人が取得することとなった宅地(の持分)についての二次相続に係る遺産分割の効力が生じた日は,一次相続に係る遺産分割の効力が生じた日となります。
したがって,更生の請求は、二次相続の申告期限から3年以内に一次相続に係る遺産分割が行われた場合に、その分割の日の翌日から4か月以内に更生の請求をすることにより、小規模宅地の評価減の特例の適用を受けることができます。