一時所得の対象である保険契約において被保険者の死亡等により保険事故が発生した際に受取る保険金は、当然に相続税の対象とはならないのであるが、被保険者の死亡より先に保険金受取人に相続が発生した場合の課税関係はどのようになるのか。
1 保険金受取人の相続
まず一時所得の要件として、保険料負担者と保険金受取人は同一であるため、保険料負担者(保険金受取人)の死亡により①生前に負担していた保険料の相続分として「生命保険に関する権利」の相続及び②保険金受取人の地位の相続が生じる。
生命保険に関する権利の相続は保険契約者=保険料負担者であれば本来の相続財産となり、分割協議によらない時は法定相続分による相続となる。一方、保険契約者≠保険料負担者の関係による相続は契約者固有の財産となり、契約者のみなし相続財産となる(相法3-1③、相法5-3)。
また、保険金受取人に係る相続については、被保険者の死亡等による保険事故発生時まで課税は生じないのであるが、保険金受取人の地位の相続が発生する。
この場合の相続分は、保険金受取人の死亡後において保険金受取人の再指定がなされていない場合には、その死亡した保険金受取人の相続人が保険金受取人となり、相続人が2人以上あるときは、生命保険金は本来の相続財産ではないため、保険金受取人に帰属する生命保険金に対する各相続人の持分割合は、法定相続分ではなく均等となる。
2 一時所得における贈与課税
次に保険金受取時、つまり被保険者死亡時の課税関係についてみていく。
今回の保険契約の成立成就時の課税はあくまで一時所得となるのであるが、上記の生命保険に関する権利が本来の相続財産あるいはみなし相続財産の違いにより被保険者の死亡時の課税対象である一時所得について贈与の課税余地が生じる。
つまり、保険金受取分に応じた保険料負担をしてない分に対して贈与税が生じることになる。例えば本来の相続財産として法定相続分により取得した保険料の相続分の割合が均等分で相続した保険金の割合を下回るときにはその差の割合相当分が贈与税の対象(他の保険料相続分の割合の多い相続人からの贈与)となる(相法5-1)。
一方、みなし相続財産として被相続人(受取人)の生命保険に関する権利の全てを取得した相続人の課税は一時所得となり、他の相続人は保険料負担を相続してないため、受取保険金の全額が贈与税の対象となる(相法5-1)。