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第三者のためにする居住用財産の売買契約と譲渡時期

1 居住用財産の3,000万円控除の特例

個人の居住の用に供されている家屋で現に居住の用に供されていないものの譲渡による所得のうち「居住用財産の3,000万円控除」の特例の対象となるものは、その家屋がその個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されたものに限られます(措法35①)。

2 譲渡時期の判定

譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時期は、その資産の引渡しがあった日によります。ただし、納税者が確定申告において選択した場合には、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日によります(所基通36-12)。

通常の売買契約においては、その締結と同時に効力が発生しますから、納税者は、契約締結の日を居住用財産の譲渡日として譲渡所得についての確定申告をすれば、その申告が認められます。

「第三者のためにする売買契約」においては、その契約の効力発生の時期はどのようになるのでしょうか。

3 第三者のためにする売買契約

平成17年の不動産登記法の改正により、これまでの中間省略登記が廃止され、同様の経済的効果(不動産の登記費用・不動産取得税の負担の軽減)をもたらす方法として登場した手法が、「第三者のためにする売買契約による方法」と「買主の地位の移転による方法」です。

事実上の中間省略登記の手法としてのこれらの方法は、いずれの方法も、不動産登記法上、適法な方法であるとして容認されています。

4 第三者のためにする売買契約における特例適用

第三者のためにする売買契約とは、売買契約の当事者が締結した契約により、売買の目的物の所有権を第三者に直接取得させることを内容とする契約です(民法537①)。

この売買契約における第三者の権利は、第三者が売主に対し売買契約による利益を享受する意思を表示した時に発生します(民法537②)。

第三者のためにする売買契約は、売買契約の締結時において第三者が特定されていなくても、有効に成立します。しかし、第三者が特定し、その第三者が売主に対してその売買契約の目的物の所有権を取得する意思を表示するまでは、その売買契約の効力は発生しません。すなわち、第三者のためにする売買契約は、第三者の売主に対する意思表示を停止条件とする売買契約であるということができます。

居住用不動産(A家屋等)の譲渡所得を契約ベースにより申告する場合には、不動産業者との売買契約日ではなく、不動産会社の指定した第三者からA家屋等の所有権を取得する旨の意思表示を受けた日の属する年分の譲渡所得として、引渡しベースによる場合には、第三者に対しA家屋等の引渡しをした日の属する年分の譲渡所得として申告することになります。

したがって、居住の用に供されなくなった日から3年経過後の12月31日までに、A家屋等の所有権を取得すべき第三者が確定し、その第三者から甲に対してA家屋等の所有権を取得する旨の意思表示がない場合には、契約ベースによる譲渡所得として申告をすることはできませんから、居住用財産の3,000万円控除の適用を受けることはできなくなります。

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