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共有持分の放棄があった場合の課税関係

1 共有持分の放棄

共有者の1人がその共有持分を放棄したときは、その持分は他の共有者に帰属することになります(民法255)。

父から相続したA土地を兄弟が各持分2分の1の割合で共有している場合、兄が自己の土地の持分を放棄すると、その持分は弟に帰属することになり、A土地は弟の単独所有となります。

共有持分の放棄は共有持分の贈与ではありませんが、共有持分の放棄により利益を受けた者は贈与税の課税上、共有持分を放棄した者からその利益の価額に相当する金額を贈与により取得したものとみなされます( 相法9、相基通9-12 )。

2  共有物の放棄による持分の取得価額

所得税法60条1項(贈与等により取得した資産の取得費等)は、居住者が個人からの贈与により取得した譲渡所得の基因となる資産を譲渡した場合にはその資産の譲渡所得の金額の計算についてその資産の取得価額及び取得時期は、贈与者の取得価額及び取得時期を引き継ぐものと規定されています。

「贈与により取得」したものだけでなく、共有持分の放棄による他の共有者に帰属した持分のように「贈与により取得したものとみなされる」ものについても所得税法60条1項の取得価額及び取得時期の引継ぎの適用はあるのでしょうか。

所得税法9条1項17号(非課税所得)は「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの( 相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与に取得したものとみなされるものを含む。)」として「贈与により取得したものとみなされるもの」を含むと規定しています。

一方、所得税法60条1項に規定する「贈与」には「相続税法の規定により贈与により取得したものとみなされるものを含む」という文言がありません。

共有持分の放棄により他の共有者に帰属した持分は贈与税の課税上、贈与により取得したものとみなされても所得税の課税上は贈与により取得したものとはみなされませんから、その持分の取得価額及び取得時期については所得税法60条1項の引継ぎ規定は適用されません 。

このため共有持分の放棄により他の共有者に帰属した持分は、その放棄があった時においてその時の通常の取引価額に相当する金額により取得したことになります。

弟の単独所有となったA土地のうち、父から相続により取得した持分の取得価額及び取得時期は父の取得価額及び取得時期を引き継ぎますが,共有持分の放棄により弟に帰属した持分の取得価額及び取得時期はその放棄があった時の通常の取引価額及びその放棄があった時となります。

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