甲は、自己が所有するA宅地(500㎡)を乙が所有するB宅地(350㎡)と交換したいと考えています。しかしながら、A宅地の時価が4,000万円であるのに対して、B宅地の時価は3,000万円であることから、甲はA宅地を分筆して、1筆(400㎡)についてB宅地と交換し、他の1筆(100㎡)は譲渡代金1,000万円として譲渡契約を締結するつもりですが、この場合の課税関係はどのようになるでしょうか。
固定資産の交換の特例の適用を受けるためには、交換時における交換取得資産の時価と交換譲渡資産の時価との差額がこれらの価額のうちいずれか高い価額の20%に相当する金額以内であることが要件の一つとされています。
この場合の交換差金の考え方について、「一つの資産(一体と利用されている土地)につき、その一部分については交換とし、他の部分については売買としているときは、所得税法第58条の規定の適用については、当該他の部分を含めて交換があったものとし、売買代金は交換差金等とする。」(所基通58-9)と規定されています。
今回のA宅地の時価4,000万円とB宅地の時価3,000万円の差額1,000万円は、高い方のA宅地の時価4,000万円の20%を超えているため、所得税法第58条の要件を満たすよう、分筆することを考えられたと思われますが、このように一体として利用している資産を区分して、一つを交換とし、他の部分を譲渡しているときは、当該他の部分を含めて交換があったものとされ、当該譲渡代金は交換差金として取り扱われます(所基通58-9)。
したがって、甲と乙との間における土地の交換及び売買は一つの行為と考えるべきであり、売買とした部分は実質的に交換差金に相当するものと認められ、この譲渡代金が、高い方の資産の価額の20%を超えていれば、所得税法第58条の固定資産の交換の特例を適用することはできないこととなります。
したがって、今回のケースは、譲渡代金1,000万円が高い資産(4,000万円)の20%を超えていますので、所得税法第58条の適用を受けることはできません。
このため、A宅地の譲渡所得の申告に当たっては、一般譲渡として申告する必要がありますが、譲渡収入金額は交換取得したB宅地の時価(3,000万円)と譲渡代金(1,000万円)の合計額の4,000万円となります。
なお、この場合の「一つの資産」とは、所得税法第58条第1項でいう同一資産の種類ごとの資産をいいますので、例えば、甲と乙との間で、甲所有のA宅地と、乙所有のB宅地とを交換するとともに、A宅地上にある甲所有のC建物を乙に売買する場合、C建物については、交換差金とはなりません。